見積書・請求書のクラウド化:ツールを選ぶときに見るポイント
結論から言うと、見積書・請求書のクラウドツールは、**機能の多さより「制度に沿った書類が作れるか」「送った・受け取ったデータを要件どおり残せるか」「今の業務の流れに合うか」**の3点で比べると選びやすくなります。この記事では、特定の製品をすすめる形ではなく、選ぶ側の判断軸を整理します。税務の個別の判断は、税理士などの専門家や税務署にご確認ください。
まず、今の見積〜請求の流れを書き出す
ツールを比べる前に、見積書を作ってから入金を確認するまでを、担当者と使っている道具ごとに書き出します。
- 見積書・請求書を何で作っているか(Excel、Word、手書き、会計ソフトなど)
- 誰が作り、誰が確認して送っているか
- どの方法で送っているか(メール添付、郵送、取引先のシステムへのアップロードなど)
- 送った書類・受け取った書類をどこに保存しているか
- 入金の確認を誰がどうやっているか
「月末に請求書づくりが集中する」「過去の請求書が探せない」など、困っている場所がわかると、必要な機能が絞れます。業務の書き出し方は業務の棚卸しの記事で詳しく紹介しています。
ポイント1:インボイス(適格請求書)の記載事項に対応できるか
インボイスとは、消費税の仕入税額控除に使える請求書のことで、登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけが交付できます。国税庁のタックスアンサー No.6625では、記載事項として次のものが示されています。
| 記載事項 | ツールで確認したいこと |
|---|---|
| 発行する事業者の氏名・名称と登録番号 | 登録番号を自社情報として設定し、書類に自動で入るか |
| 取引年月日 | 月ごとにまとめて請求する場合の表記ができるか |
| 取引内容(軽減税率の対象品目である旨) | 品目ごとに税率を設定し、対象品目に印を付けられるか |
| 税率ごとに区分した対価の額と適用税率 | 10%と8%が混在しても税率ごとに合計されるか |
| 税率ごとに区分した消費税額等 | 端数処理のルールを確認・設定できるか |
| 交付を受ける事業者の氏名・名称 | 取引先マスタから入力できるか |
飲食料品を扱う事業者は、税率の扱いに変更が予定されている点にも注意が必要です。同ページでは、令和9年4月1日から2年間、飲食料品の譲渡の消費税率が引き下げられると案内されています。税率の設定を自分で変えられるか、変更への対応方針が公開されているかも、比較のときに確認しておきましょう。
ポイント2:電子取引データを要件どおり保存できるか
見積書や請求書をPDFなどのデータでやりとりした場合、そのデータ自体を保存する必要があります。国税庁のリーフレット「電子取引データの保存方法をご確認ください」では、受け取った場合だけでなく送った場合も保存が必要とされ、主に次の3点が求められています。
- 改ざん防止の措置: タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムでの授受・保存、または改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る、のいずれか
- 検索できること: 「日付・金額・取引先」で検索できる状態にする
- 確認できる環境: ディスプレイやプリンタなどを備え付ける
ツールを選ぶときは、「送った請求書が自動で保存されるか」「受け取った請求書も取り込んで一緒に管理できるか」「日付・金額・取引先で検索できるか」を確認します。なお、訂正・削除の履歴が残るシステムで対応する場合、国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】では、データの授受もそのシステム内で行う必要があると説明されています。メールで送ったPDFを後からツールにアップロードする運用の場合は、別の方法で要件を満たす必要がないか確認しておきましょう。
同じリーフレットでは、専用システムがなくても、表計算ソフトで索引簿を作る方法や、ファイル名に「日付_金額_取引先」を付けてフォルダにまとめる方法も紹介されています。いきなりツールを入れずに、まずこの方法で運用を始めるという選択もできます。
保存期間と、やめるときの書き出し
インボイスの写しや受け取った請求書などは、国税庁のタックスアンサー No.6625によると、原則として課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する必要があります。クラウドツールは、解約するとデータが見られなくなる場合があるため、次の点を確認しておきます。
- 解約後や料金プランを下げた後に、過去のデータがどう扱われるか
- 書類をPDFで、一覧をCSVなどでまとめて書き出せるか
- 書き出したデータを、自社で検索できる形で保存し直せるか
ポイント3:誰が使うか、何とつなぐか
最後に、運用面を確認します。
- 権限: 作成する人、承認する人、閲覧だけの人を分けられるか
- 送り方: メール送信、郵送代行、取引先ごとの送付方法に合うか
- 連携: 使っている会計ソフトや銀行口座の明細とつながるか
- 費用: 月額料金に加え、ユーザー数・発行件数・郵送代行などの従量部分を合わせて試算する
クラウドツールは社外からも使えるぶん、アカウントの管理が大切です。担当者ごとのアカウント発行や二段階認証の考え方は、パスワード管理の基本を参考にしてください。また、Web制作などを外注する立場で書類を受け取る側のポイントは、Web制作の見積書の読み方で紹介しています。
まとめ
- 比べる前に、見積から入金確認までの流れと困りごとを書き出す
- インボイスの記載事項(登録番号・税率ごとの金額と消費税額など)に対応できるかを見る
- 送った・受け取った電子取引データを、改ざん防止・検索の要件を満たして保存できるかを見る
- 7年間の保存と、解約時の書き出し方法を確認する
- 権限・送り方・会計ソフトとの連携・従量部分を含めた費用で比べる
制度の細かな適用は事業の状況によって変わるため、個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。業務のデジタル化の進め方に迷ったら、無料相談でお気軽にご相談ください。
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